幽霊噺

初めての作家さんでしたが、良いのを見つけたとほくほくし
ております。作者は輪渡颯介、タイトルは『ばけたま長屋』
です。それほどおどろおどろしくない時代小説でしたので、
怖がりの人でも、夜中のトイレなどに起きても大丈夫なお話
と思われます。

指物師としての修行を終え、一本立ちしようと一人暮らしを
始めた弦次でしたが、広いからという理由で見つけた長屋が
どうやら妙だと気づきました。
店子は彼の他にはもう一人しかおらず、しかも何をして食っ
ているのか、まったくもって判然としない遊び人の三五郎だ
けだったのです。
弦次は意地で引っ越しは止めたのですが、ホッとしたことに
さらにもう一人、住人が増えました。
幽霊のみを描きたいと大真面目に思って、それゆえに貧乏暮
らしをしている絵師の雲居朔天でした。

うっかり朔天の幽霊見学を邪魔してしまったため、弦次は己
に鞭打って(笑)幽霊噺を仕入れてくるのですが、そもそも
あまり得意でないだけに苦労しているようで、その姿には悪
いと思いつつもついつい笑ってしまいます。
こんな状態の弦次の手助けをしてくれるのが妹のお照でした。
大工の棟梁の娘に生まれた彼女は元気でおきゃんで、見ている
こちらもその天真爛漫ぶりに頑張れ、と声援を送りたくなって
くるようなコです。

短編集と思いきや、最後の最後でおぉっと驚く仕掛けに度肝を
抜かれ(苦笑)、思わず前のページに戻って登場人物の名前を
頼りにページを遡り、やっと確認して納得してしまいました。
他の作品にも手を伸ばしたくなる作者を見つけて、ラッキーな
気分です。


ばけたま長屋
KADOKAWA/角川書店
輪渡 颯介

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